自分で対戦用のポケモンを育ててみたい!と思い立ったところ、悩む壁の一つである努力値調整。
ネット上ではよく16n-1調整など何やら難しい用語と共に調整が並んでいるものの、それらには一体どういう意図があるのか、他にも努力値調整に役立つ知識があるのかどうか、そんな疑問を解決できる記事になればと思っています。
能力値の計算方法
ポケモンの能力値は種族値・努力値・個体値と呼ばれる 3 つの隠しパラメータから計算されることはよく知られていますが、計算法は知っていますでしょうか?レベル 50 かつ個体値が最高値のときの能力値は次のように計算できます。
HP:種族値+75+(努力値分)
その他の能力:(種族値+20+(努力値分))×性格補正
(努力値分)
個体値が奇数のときには最初だけ努力値4で能力値が1上がり、それ以降は努力値8毎に能力値が1上がります。個体値が偶数の場合は最初から努力値8毎に能力値が1上がります。努力値は1つの能力に最大で252まで振ることができ、このときその能力値は1(努力値4の分)+(248÷8)=32上昇することになります。
ちなみにレベル 50 以外の場合の能力値計算の式は
HP: {(種族値×2+個体値+努力値/4)×Lv/100}+10+Lv
その他の能力: [{(種族値×2+個体値+努力値/4)×Lv/100}+5]
となっています。
また性格補正、すなわち各性格による能力の上昇・下降は下の表のようになります。
緑色の性格は対戦用のポケモンに特によく使われる性格です。能力変化の割合は上昇が 1.1 倍、下降が 0.9 倍、いずれも小数点以下切捨てとなります。性格補正に限らずゲーム中に登場する数字は全て小数点以下が切り捨てられます。
今やポケモンの能力値計算ツールは多く存在しますが、それでもポケモンの能力値を自力で計算できると何かと便利です。
練習問題:デデンネ
デデンネの種族値は HP 67 攻撃 58 防御 57 特攻 81 特防 67 素早さ 101 である。性格 はおくびょう、個体値は 6V とする。
- 努力値なしのときの各能力の能力値は?
- デデンネの素早さを最大まで伸ばしたい。素早さへ努力値をいくつ振ればよいでしょうか。
- HP を 151 にしたい。努力値によって HP 数値をいくつ上げればよいでしょうか。
- HP 実数値を 151 にするのに必要な努力値はいくつでしょうか。
- 2、4のとおり素早さ、HP に努力値を振り、残りの努力値を特攻に振りました。デデンネ の能力値はいくつになるでしょうか。
答え
- HP142,攻撃 70,防御 77,特攻 101,特防 87,素早さ 133
- 素早さへ 252 振る。
- 142 から 151 にしたいため、9 上げたい。
- 能力値を 9 上げるために必要な努力値は 4+(8×8)=68
- 余っている努力値は 508-252-68=188 である。努力値を 188 振ると能力値は 1+(184÷8)=24 上昇する。よって最終的なデデンネの能力値は 151-70-77-125-107-168
努力値配分に役立つ知識
基本は極振り?
極振りとは、努力値を 2 つの能力に 252 ずつ振り分けることです。余った努力値 4 は どこかに適当に振り分けたり、防御と特防の種族値が同じポケモンは特防に振って特性「ダウンロード」で特攻が上がらないよう調整することがありました(ダウンロードを持つポケモンは特殊型が多いため)。高速アタッカーなどは基本的には攻撃系・素早さの極振りで間違いはないでしょう。重戦車型、つまり相手の攻撃を耐えて反撃で相手を倒すタイプのポケ モンはHPと攻撃系に努力値を割くことが多いのですが、このとき HP に努力値を 252 振らず、 244 振って残った 8 を防御・特防に 4 ずつ割り振ると少しだけお得です。HP が 32 上昇するだけよりも HP が 31、防御・特防が 1 ずつ上昇するほうが微々たる差ではあるが耐久力は高くなります。
総合耐久力が高くなる配分...2:1:1 の法則
まず基本的に、ポケモンの耐久力は防御・特防それぞれ
・HP×防御(or特防)
で表されます。
そして、HP・防御・特防の合計の値が一定である時、HP:防御:特防=2:1:1 に近づくようにすると総合的な耐久力が高くなることが知られています(本記事の一番後ろに解説を付けています)。
例えば HP が低く防御・特防が高いヨノワールであれば HP に努力値を振ると耐久力が大きく上がり、HP が高く防御・特防が低いフワライドであれば防御や特防に努力値を振ると耐久力が大きく上昇します。多くのポケモンは前者のようにHPに努力値を割くことで 2:1:1 の割合に近づくのですが、HP種族値が非常に高いポケモンなどを育てる場合は意識しておくとよいでしょう。
もちろん限られた努力値で特定の攻撃を耐えたい場合などはこの法則に囚われることなく、次のセクションのようにその攻撃を耐えれるよう調整してみましょう。
物理・特殊片方だけでも耐久力を高めたい…HP=防御(特防)に近付ける
ポケモンの耐久力を満遍なく高めたい場合には上のように2:1:1の比率に近付くように耐久力を伸ばすのですが、素早さや攻撃力を優先するため物理・特殊片方の耐久力だけを最小限に伸ばしたい場面もあるでしょう。
そういった場合はHP=防御(特防)に近付くように努力値を配分すると効率よく耐久力を伸ばすことができます(x+yが一定の時、xyが最大値となるのはx=yの時ですね!)。例えばレベル50・努力値無しの場合を考えて、フライゴンはHP:防御=155:100であるため、物理耐久を優先して伸ばしたい場合にはHPより防御へ努力値を割くと物理耐久がよく伸びます。逆にヨノワールはHP:防御=120:155 であるため、物理耐久を高めたい場合もまずはHPを伸ばしましょう。
短所にこそ努力の効果あり?
例えばラッキーの防御種族値はたったの 5 であり、努力値を振らない場合の防御の実数値は25 です。ここで防御に努力値を全振りすると 32 上昇するため、防御の値は 57 となります。 努力値を振ることによりなんと防御力を 2 倍以上に伸ばすことができました。ラッキーに極力防御の努力値を振りたいのはこれが理由です。逆にラッキーの HP 種族値は 250 であり、努力値なしでの能力値は 325 。努力値を振って 32 伸ばすと HP は 357 となり元と比 べて 1.1 倍伸びた程度です。ラッキーは極端な例ですが、他にも努力値を割くことで耐久や火力に大きな変化が見られるポケモンも多くいます(ソード・シールドではジュラルドンなどが顕著です)。長所を伸ばすだけでなく、短所を補うことも重要な例ですね。
HP 実数値調整
自分のアイテムや技との相性をよくするための調整
これは具体例から紹介していきます。
(ここで「4n 調整」のような表現が出てきますが、これはある数が 4 の倍数であることを意味します。例えば 12 は 4n であり、11 は 4n-1 です。)
みがわり(4n 以外調整)
みがわりは「最大 HP の 1/4 を消費してみがわりを作り出す」技です。つまり使用時に使用者の HP が最大 HP の 1/4 減少する。では最大 HP が 4 では割り切れないときどうなるでしょうか。
最大 HP が 160(4n)の場合、身代わりで消費する HP は 40 なので、身代わりの使用とともに HP は 160→120→80→40 と減少し、身代わりを使えるのは 3 回となります。
最大 HP が 163(4n-1)の場合、身代わりで消費する HP は同じく 40 で、身代わりの使用 とともに HP は 163→123→83→43→3 と減少し、身代わりを 4 回使うことができます。
身代わりをできるだけ多い回数使いたい場合に有効な調整です。
みがわり+ピンチ系きのみ(チイラのみ等)(4n 調整)
上の例に続いてみがわり系の調整となります。みがわりは計画的に HP を消費する方法であるため、しばしばチイラのみ等のピンチ時に発動するきのみと一緒に用いられることがあります。これらピンチ系のきのみは残り HP が最大 HP の 1/4 以下になった時に発動します。
そこで上の例だと、最大 HP が 160(4n の場合)であれば 3 回目の身代わり使用時にきのみが発動します。最大 HP が 4n 以外の場合は 4 回身代わりを使わないときのみが発動せず、 しかもそれほどギリギリの HP の状態では相手の先制技や天候ダメージで倒されてしまいかねません。このコンボを使う場合は HP の 4n 調整をしておくと良いかもしれません。
たべのこし(16n 調整)
毎ターン HP を回復してくれる、持久型のポケモン愛用のアイテムであるたべのこし。その回復量は最大 HP の 1/16です。例えば最大 HP が 191(16n-1)の場合回復量は 11 で、最大 HP が 192(16n)のときは回復量は 12 となります。毎ターン効果があるため長い目で見ていくと この 1 の差はなかなか馬鹿にできません。たべのこしを持たせるポケモンはできるだけこの 16n のラインを超えるように HP を伸ばしたいところです。
はらだいこ+オボン(偶数調整)
はらだいこは最大 HP の半分を消費し攻撃力を最大まで引き上げる技です。そしてオボンのみは HP が最大 HP の半分以下になったとき、HP を最大 HP の 1/4 回復するアイテム。体力を大きく消費してしまうはらだいことは相性の良いアイテムです。
このコンボを使う場合、はらだいこ使用後に即座にきのみで回復するためにも最大 HP を偶数にしておくのが望ましいです。例を挙げると、最大 HP が204(偶数) の場合ははらだいこの使用により HP が 102 まで減少し、オボンのみが発動します。しかし奇数、例えば 203 の場合ははらだいこ使用後の HP は 102 となり、ギリギリでオボ ンのみが発動しません。はらだいこ後に即座に HP を回復しないと、次の相手の攻撃でオボンのみを発動させることもなく倒されてしまうかもしれません。
定数ダメージを低く抑えるための調整(16n-1、10n-1など)
「16n-1 調整」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。これは毒ややけど、あられの天候ダメージ等、俗に言う「定数ダメージ」を低く抑えるためのテクニックです。
定数ダメージはそれぞれダメージの割合が決まっており、例えば砂やあられによる天候ダメージは最大 HP の 1/16 です。つまり例えば最大 HP が 176(16n)であれば受ける天候ダメージは 11、最 大 HP が 175(16n-1)であれば受ける天候ダメージは 10 となります。また、どくややどりぎのたね のダメージは最大 HP の 1/8 です。そのため最大 HP を 8n-1 の値に調整しておけばそれらによって減少する HP を低く抑えることができるようになります。
たかがダメージ 1 の差であっても毎ターン重なれば大きな差となってきます。HP に割く努力値を減らした分は防御系に回してやれば総合的な耐久力もほとんど落ちないので、ちょうど良い数値が近くにある場合は意識してみると良いでしょう。
他には命の球のダメージを低く抑える調整(命の球は最大 HP の 1/10 のダメージ)、リザ ードン等のステルスロックで HP が半分になるポケモンは HP を奇数にしてステルスロッ クのダメージを 2 度耐えれるようにする、等の調整が存在します。
HP に努力値を全振りすれば実数値 177 となるハッサム。しかしながら鬼火を受けやすい、霰を降らすユキノオーと戦うこと が多いなどの理由から、HP を 16n-1 であ る 175 で止めることが多かったポケモンです。
(素早さの調整ライン…流行ポケモンをチェック!)
素早さの調整は戦いに直結するため、優先度の高い調整項目です。基本的には伸ばせるなら伸ばしておくのが良いのですが、耐久力を重視する場合には最小限で済ませたい場合もあります。
調整のラインは対戦環境に大きく依存するためここで明確なラインを紹介することはできないのですが、対戦で流行しているポケモンの情報を集め、重要になりそうな素早さラインを確認しておくと良いでしょう。
終わり
以上となります。みなさんのポケモン育成の参考に少しでもなれば幸いです。
最後に私が使っているExcelの能力値調整シートへのリンクを置いておきます。ダウンロードしてぜひ色んな努力値調整を試行錯誤してみてください。
https://www.maikeruexe.jp/entry/2019/12/02/003944
[配布用]ポケモン能力値計算シート 厳選・努力値配分用.xlsx - Google ドライブ
おまけ:最適耐久比率2:1:1の解説
問題定義
※この考えは、物理攻撃・特殊攻撃がどちらも同じくらいの威力で、同じくらいの頻度で飛んでくるという仮定の下の最適化です。あくまで一つの参考指標と考えてください。
ポケモンのHP, 防御, 特防をそれぞれH,B,Dとおく。攻撃側の攻撃(特攻)をAとする。
・まず、H, B, Dの合計は一定であるとして
H+B+D=一定 …①
・ポケモンが攻撃によって受けるダメージは、補正分・乱数分を除くと以下のように計算される。(https://w.atwiki.jp/terabi_pokemon/pages/42.html)
{(Lv × 2 ÷ 5 + 2) × (威力 × A ÷ B) ÷ 50 + 2}
青字の+2は十分小さい数とみなし無視すると、ダメージは1/Bに比例すると見なせる。
そのためダメージ比率はこれをHPで割って1/BHに比例する数として表すことができる。(このBHが俗に言う耐久指数です)
特殊攻撃に対するダメージ比率も同様に1/DHで表すことができる。よって、
1/BH +1/DH…②
が最小となる、というのが最適耐久問題の条件とする。
(よく耐久指数の合計をBH+DHで表している例を見ますが、ダメージ割合の観点で見ればこの分数の足し算で表すのがより正確だと思います)
以上より、
H+B+D=一定のとき、1/BH+1/DHが最小となるようなH,B,Dの関係を求める、という問題になる。
解説
1/BH + 1/DH について、相加平均>=相乗平均となり、相加平均が最小値となるのは
1/BH = 1/DH の時、つまりB=Dのとき。
これを用いて、①よりH+B+D=X (X:定数)とすると
H + 2B = X
変形して
H = X - 2B
これを、②よりy = 1/BH + 1/DH に代入すると
H>0であることから 0<B<X/2であり、この関数が最小値を取るのはB=X/4の時である。つまり
4B = H + B + D
→ 2B = H
以上より、H + B +Dが一定の時、被ダメージ比率1/BH + 1/DHが最小となるのは、 B=D、H=2Bの時である。